わざわざ書かずとも、私もそうであるが競馬ファンで無かろうとも、もう既に多くの人が知っている事だろう。
史上希に見る名馬と、天才・武豊騎手のコンビの絶対的な強さは、単勝1.0倍という考えられないオッズに全てが現れている。
過去、数レースの実況中継を見てきたが、本当に、さも当たり前のように圧倒的な差で駆け抜ける。
6戦6勝の無敗で挑んだ今日の菊花賞。
レース前は、これまでで一番落ち着いた様子。
いつもになく全く無難なスタート。普段より前方になる中段辺りからついて行く。
最終コーナーに差し掛かり、スピードを上げては来たものの、先頭を行くアドマイヤジャパンにはかなりの差を付けられている。
ここから一気に抜き去るのを何度も見てきたとは言え、普通に考えればとても追い越せるモノかと言うくらいの差である。
やはり、勝ち続けるのは・・・という、素人の不安をよそに、彼は大外からあっと言う間に差を縮め、交わして、さらに逆に圧倒的に差を付けるのである。
異次元。
血筋、才能とはこれほどまでのモノなのだろうか。努力あってこそ・・・と言うモノがなければ、何だか全てを否定されてしまうくらいのイヤな感じさえする。
ただ、当然だが、多くのスタッフの皆さんの並々ならぬ努力と、彼自身の成長がココまでに達した理由である事に間違いない。
それが、レース後の武騎手のコメントに現れている。最強と言われる者の、勝ち続ける事を宿命づけられた者への、途轍もないプレッシャー。
これこそ、常人では計りきれない状況に対峙して、そして見事にそれを達成する。
もう既に伝説に名を馳せてしまった。それに相応する希有な存在だ。
一番小柄・軽量ながら、他の馬と並ばない限りは、見事な毛並み、毛艶に、文句の付けようの無い美しい筋肉に包まれた姿。自信が漲り、何ともいえない雰囲気を放つ。
この美しさは、ありとあらんモノの結晶なのだろう。
今の私には、あまりにも圧倒的で、眩しく、美しすぎる存在だ。一頭の競走馬に、完敗である。
時が止まり、何も進めず、いまだに何一つ、やり遂げられない自らに、衝撃を与える一幕だった。