SILKYPIX 2.0β Macintosh版を試用してみた

SILKYPIX市川ソフトラボラトリーは、本日SILKYPIX Developer Studio 2.0β Macintosh版を公開した。ただし、10月1日までしか使用できない制限付きで、正式版がその時期にリリースされる予定と思われる。
SYLKYPIXは、デジタルカメラのRAWデータを調整し、JPEG、TIFFなどの画像データへと変換する、いわゆる「現像」ソフトであり、通常各カメラメーカーが独自に提供する「純正」ソフトとは違い、様々なメーカーのカメラに対応した汎用ソフトである。このような「サードパーティ」製の現像アプリケーションとしては、Adobe Photoshopシリーズがメジャーであるが、SYLKYPIXは初期バージョンであるSYLKYPIX1.0が開発中の段階から、取り回しの良さ、現像精度の高さ等、独自の技術で注目されてきたアプリケーションだ。現在では、カメラメーカー、Adobeと並んで、紹介されるほどの地位を気付いている。
私も現在、SYLKYPIX1.0 Macintosh版を発売当初からメインに使用している。

SILKYPIXの利点としては、まずは先にも述べたように、ほとんどのカメラメーカーのRAWデータを取り扱うことができること。もちろん新発売の機種については、対応するまで待つ必要があるが、市川ソフトは新機種への対応が非常に早く、少しでも新機種が出たら、特にデジタル一眼レフの場合は、1機種に対してでも即時に対応し、その都度細かいリビジョンアップを行う。
元々ダウンロード販売のみと言う特殊な販売方法から、返ってこういったアップデートが違和感なく思えるところだ。
前バージョン(Mac版は現役だが・・・)1.0ではMac版はVer1.0.13、Windows版に至ってはVer.1.0.21.0と言うところまで繰り返しアップデートが行われた。
また、Adobeが提唱しているフォーマットDNG(Digital Negative)にも対応しており、Adobeが提供しているAdobe DNG ConverterでDNG化すれば同様に使用できる。つまりAdobeの対応の方が速い場合でも、これを使用すればSILKYPIXで認識できることになる。しかし、ココまでのところ市川ソフトの方が遥かに対応が早いようだ。

次に、SILKYPIXの特徴としては、昨日としても存在するノイズ低減処理を使わないまでも、メーカー製と比較して、ノイズレスで階調が滑らかで、広ダイナミックレンジな画像を実現する。そこそこ表示速度、調整の反映速度も速い。
調整によって思ったような画像に追い込んでいくことが比較的可能な部類なので、ユーザーの満足のいく画質を得られる事が人気の要因だ。

今回メジャーアップデートする前にβ版の配布となったが、Windows版は既に今月初めに正式版の販売が開始している。Windowsの先行開発という形は現状、仕方のないところか。

Ver.2.0
Dockに登録した状態。左がVer.1.0のアイコン。

Ver.2.0となるに当たって追加された機能は多岐にわたり、
・ファインカラーコントロール
・パラメータ・コントロールの表示形式のカスタマイズ機能
・オートホワイトバランス
・回転機能
・デジタルシフト
・ハイライトコントローラ
・ホワイトバランス微調整機能の改良
・RGB独立トーンカーブ
・自動露出補正
・リネーム/一括リネーム
・トリミング
・Exif情報の表示
・暗部調節
・レンズ収差補正
・3次元カラーマッピング
となっている。細かい機能説明はメーカーサイトでご確認を。

レンズ収差補正ざっと一通り試用してみて、比較的簡単かつ、ものすごく有効である機能だと感じたのが、「レンズ収差補正」。
Photoshop CS2には、細かく調整ができる「光学レンズ補正」機能があるが、当然これはRAWの段階で使用はできず、少し複雑な分、使いこなしが難しくもある。(倍率色収差、周辺光量についてはCamera RAWダイアログでも調整可)
しかし、Ver.2.0では右のようなダイアログが用意されており、周辺光量、湾曲収差、倍率色収差がそれぞれ2つのスライダーで調整できるもの。

これらの問題が発生するのは、主に広角レンズを使用した場合である。
ただし、デジタル化した一眼レフは、フィルムの135サイズよりも小さな撮像素子を使用している場合がほとんどなため、レンズの中心付近を主に使うことから、これらの影響が銀塩に対して少ないと言われる。また、最近開発されているデジタル対応、専用レンズなどは、これらの問題を極力対策したものが多いのも一つの要因である。
しかし、超広角域をカバーしたレンズを使用すると、やはり同じような問題を発生する。また、デジタルは撮像素子の平滑性が高く、受光角の垂直性を求めるため、周辺光量には弱点がある。

先日のSAEMIの撮影の様子でも触れたが、超広角レンズを使用する頻度が増えた。さらに今回使用しているのは、フィルムサイズと同じ撮像素子を持つ、EOS-1Ds Mark IIであるため、非常に影響を受ける。
一つ例を挙げよう。
下の左側写真が元画像で、SAEMIが非常に気に入ってくれた一枚なのだが、私の判断基準では、ボツとなってしまう。
太陽を背にした完全な逆光下で、日中シンクロにより撮影したものだ。
レンズはEF16-35mm F2.8Lで、そのワイド端16mmで撮影している。SAEMIの下半身に注目して欲しいが、糸巻き型の湾曲収差のため、末広がりになり、顔の大きさに比べると下半身に向かっていくに連れて広がって、また妙な歪みがあるのが分かるだろう。前回例に挙げたように、この特有の歪みを巧くいかしたフレーミングができると、面白い効果となるのだが、失敗するとこのような事になる。
この画像に対して、レンズ収差補正の真ん中の項目「ディストーション」の湾曲率を20(膨らます方向)、わずかに中央側重視の-10というパラメータを与えて適用した(各項目のチェックボックスをONすると適用される)ものが右側の画像だ。

いかがだろう。簡単に言うと、中心付近を膨らませて周辺部を切りつめたような補正であるが、SAEMIの姿が見事に自然な形に補正されている。全体的に周辺部を見ていただくと分かるが、わずかにピクセルを失ってしまっており、画角が狭まった事になる。これは歪みを取るために犠牲となるのは仕方のないことであり、Photoshopではこの犠牲になってピクセルが消失した台形状のものからトリミングする作業を手動でやらなければならないのに対し、Ver.2.0ではこれを最大限に有効部分を残した形で自動的に拡張(切り取るだけでなく、元のピクセルサイズに合わせている)している。・・・が、ほんのわずかである。SAEMIはもう少し望遠側で撮ったような自然な姿になっているが、背景の遠近感は、超広角レンズらしさを残している。
特に修正を要するほどの歪みがない場合でも、この機能は使い勝手があるのではなかろうか。

さらに、シェーディングにより、周辺光量の低下を抑えてみた。ただ、このビネッティングはレンズの効果として、好まれる場合も多い。この写真でも、特に補正する必要はないと思う。

しかし補正した結果はそれはそれで良好で、全く自然に仕上がる。右側は、周辺部を明るくした際、太陽付近のハイライトも明るくなってしまったため、別の新機能であるハイライトコントローラで、できるだけハイライト部の色彩をを回復させたもの。
これらの作業が、いくつかのスライダーのコントロールでいとも簡単に可能になり、失敗写真が救えるどころか、きちんと使えるところまで補正される。それもRAWの段階でパラメータとして保持しているため、いつでも再調整可なのだ。
これは、広角レンズを積極的に運用できる事を意味し、デジタル時代の新たな撮影技術を生むものだと思う。

さらなる感想は後日に。

発表当日書き始めて、ココまで書き上げたのが、3日後というのが・・・(^_^;)