F1日本GP

昨日、三重県の鈴鹿サーキットで開催された2005年シーズンフォーミュラ1第18戦日本グランプリ。
フジテレビでは1987年の放映以来、初の生中継という事で、ご覧になった方もたくさんいらっしゃったのでは。
生放送まで約20年も掛かったのが不思議だ。
何故1990年前後の最盛期に実現しなかったのか。
ま、実現しても、放送設備などの問題もあるだろうし、現在のような臨場感ある映像にはならなかっただろう。

土曜日の雨の予選で決勝も雨が心配されたが、綺麗に晴れ渡って素晴らしいレースコンディションになったようだ。どうやら雨だったのはこの辺り関東周辺だけだったのかな・・・

既にフェルナンド・アロンソの史上最年少チャンピオンが前戦で決定し、見所は予選で雨に助けられた佐藤琢磨選手やトヨタ勢の好結果に絞られたかに思えた。
が・・・、ふたを開けてみれば、やはり今年のシーズンを引っ張った、アロンソ、ジャンカルロ・フィジケラのルノー勢とマクラーレン・メルセデスのキミ・ライコネン、そして昨年までの王者、ミハエル・シューマッハの戦いだった。
そこに焦点を当てれば、非常に見応えのあるレースだった。タイトル争いが終わって、さらに予選の雨の悪戯でことごとく後方に沈んだ彼ら。このレースではあまり期待できないと思っていた。しかし、レースが始まると、スタート直後の琢磨選手のコースアウトや、最終コーナーでのファン・パブロ・モントーヤの大破により、セーフティーカーの導入が、トップで燃料を少なくして以下を一気に引き離しに掛かったトヨタのラルフ・シューマッハの目論見を台無しにし、そして主役達の独壇場をアシストする事になった。

途中の見所は、ミハエル・シューマッハに対して新世代のフェルナンドやキミの猛追、そしてマシンパフォーマンスの優位性を活かしたオーバーテイク。マイケル(ミハエル)も、それに対して必死に抵抗し、見事なバトルを演出する・・・が、今年のフェラーリには戦闘力が欠けている。
フェルナンドやミカのオーバーテイクは何とも言えない衝撃を与えるに充分だったのではないか。

なんとなく・・・94年のマイケルと、そしてアイルトンとの立場をダブらせてしまう。
マイケルにはこのところ「引退」などという噂がつきまとうが、彼はフェラーリを再建させる事に尽力すると、私は思う。
まだ・・・彼はアイルトンの記録に一つ並んでいない。絶対に彼はそれを目指しているはずだ。

最終的にはタイトルは奪われたものの、今シーズンのベストパッケージ、キミ・ライコネンとマクラーレン・メルセデスが最速だというのを見せつける結果になった。
好位置から発信したジャンカルロを、最終ラップのホームストレートで並び、第1コーナーでオーバーテイク。この瞬間は多くのF1ファンが鳥肌が立ったのではないだろうか。17番手グリッドスタートからの見事な大逆転勝利。

88年、当時の最速を誇ったマクラーレン・ホンダとアイルトン・セナ。12番グリッドから、スタート直後のエンストで一気に最後方まで順位を落とすも、奇跡的な逆転勝利。そして初のタイトルを奪取した。当時には現在のような燃料補給やピット戦略でのオーバーテイクというのはない。

鈴鹿サーキットでは必ずドラマが起こる。

その前年のフジテレビの中継が始まった年。佐藤琢磨選手は初めてF1を観戦したという。そこで、彼に衝撃を与えたのが、鈴鹿を暴れるイエローのキャメル・ロータス・ホンダを駆るアイルトン・セナ。そのレースの結果は、マンセル、ピケのウィリアムズ・ホンダ、セナ、中嶋のロータス・ホンダの、伝説のホンダエンジン1・2・3・4フィニッシュ。それが琢磨選手を現在に導く結果となっている。

佐藤琢磨選手。28歳である彼は他の選手とは異なり、自動車レースに臨んだのがなんと20歳の時。それまでは自転車競技で日本を代表する選手だった。しかし、彼にはF1を目指すという確固たる意志があった。突然早稲田大学を中退し、鈴鹿のレーシングスクールに飛び込む。レースを始めるには遅すぎると思われるも、そこを主席で卒業し、単身で本場イギリスに乗り込む。
そしてなんと2シーズン目で、英国F3を12勝という、かつてアイルトンが作った記録に並んでのチャンピオンとなる。

そして・・・レースを始めて5年でF1のシートを獲得する・・・

ココまでで、もう充分彼は素晴らしい実績の持ち主であり、人間的にも素晴らしい彼は尊敬に値する人物だ。
F1参戦4年目。昨シーズンは表彰台を獲得するなど、今後に期待を持たせたが、今シーズンは度重なる不運に見舞われ、現在たったの一度8位に入賞しただけ。さらに日本グランプリを前に、来シーズンのBARホンダのシートから外される事が発表された。

BARが来年純ホンダワークスとなり、新たに作られる別のチームにホンダエンジンが供給されるという。そこに琢磨選手という話もある。もちろん今はそれが有力だろうが、本来そんなところに留まる選手ではない事は誰の目にも明らか。チームメイトのジェンソン・バトンが安定した成績を残せる選手だというのはそれも事実。しかし、今年は明らかに実力以外の要因によりふたりの成績が広がった。
・・・しかし・・・実力至上主義。そう言う事なのだろう。

琢磨選手は今踏ん張りどころ。日本グランプリも望まない結果となった。レース後の彼の表情から、色んな想いが感じられた。誰でもない、彼自身が一番悔しいのだ。何もかもがうまくいかない・・・

比較にもならないが(^_^;)、私の現状に重ねてしまう。
物事が全く自分の思うようにならない状況というのが、どれほど苦しいものか。
彼はそんな中でも丁寧にインタビューにも答えているが、内心は穏やかではないはずだ。でも、彼は多くの可能性を持っている事を理解されている。いつか、チャンピオン争いをする彼の姿が見られる事を信じたい。
自分の道を全く開けない私から見れば、彼は今最も尊敬できる人物の一人である。

さて・・・私は何をすべきだろうか・・・